木曜時代劇「ちかえもん」観ました

NHKで放送が始まった木曜時代劇「ちかえもん」が大変楽しかったので感想です。

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人形浄瑠璃や歌舞伎の戯作者で、教科書にも載っている、大河のナレーションもやったことがある近松門左衛門。ですがドラマは小難しいことは何ひとつありませんでした。

この近松門左衛門=ちかえもん(松尾スズキ)は芝居小屋の不入りの責任を押し付けられたり「大阪で生まれた女」の替え歌を歌いながらとぼとぼ帰ると母親から小言を言われたりする、「ただのスランプ中の初老のシナリオライター」なのです。

 

そんな男が名作「曽根崎心中」を世に出すまでの物語ですが、心中物という暗い題材を取り上げるのに、ドラマの展開も周りを囲む登場人物も賑やかで軽やかで、時代劇というよりは喜劇のようでした。画面は明るく、刀を抜くようなシーンがあるわけでもなく(ドスを向けられはしましたが)、台詞は軽く、メタ的な発言を挟みながら、近松門左衛門や当時の世情をよく知らなくても楽しく観られます。

謎の渡世人・万吉(青木崇高)との漫才のような掛け合いに笑い、本当に心中しちゃうのか心配なお初(早見あかり)徳兵衛(小池徹平)、竹本義太夫(北村有起哉)との関係も気になります。そして母親役の富士純子がいじわるで品があって素敵でした。

そんな中で創作をする苦しみや売れなかった時の落胆、認められたい欲求やプライドも見え隠れします。芝居が不評で「もっと売れるものを書け」と言われ、「書けというなら褒めてくれ」と叫ぶちかえもん。けなされるのも嫌ですが、誰にも観てもらえない、感想すら出てこないのはもっとつらいよなあと思いながら観ていました。先生とおだてられて調子に乗ったり金に目がくらんだり、優柔不断なちかえもんがいかにして「曽根崎心中」を書き上げるのか、来週も楽しみです。

というか、みんな観ようよ! ドラマも楽しいし文楽も楽しいよ! とふれまわりたくなりました。ドラマを見てピンときたらぜひ文楽公演にも足をお運びください、と自分にとっては何の得にもならないんだけれどおすすめしたいです(再放送は毎週火曜日14:05~です)。

 

人形浄瑠璃を作っているひとたちの話なので、芝居のシーンもあります。文楽が好きな私にとっては明るくてテンポが良くてまだまだ先が読めないうえ、ドラマでも文楽が観られて一石二鳥です。義太夫節指導に三味線は竹澤團七さん、人形遣いは桐竹勘十郎さん、吉田幸助さん、吉田勘一さん、吉田蓑紫郎さん、桐竹勘次郎さん、桐竹勘介さん、桐竹勘昇さん。毎週出てきてくれないかな……。

ドラマは全8回、どんな楽しい物語になるでしょう。春先まで、つらい冬場を乗り切る支えのひとつとなってくれそうなドラマです。