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私の足が収まる靴はいずこに/『アラジンと魔法のお買い物』

何かを購入するとき、私は本当にこれを買っていいのかと悩むタイプです。最後まで使い切るのに本当にこのノートでいいのかとか、今手に取ってる大根よりもう少し奥の大根のほうがスが入ってないんじゃないかとか、うじうじと売り場に立ち尽くすこともしばしば。ただのケチなんだと思いますが、そんな煮え切らない買い物ばかししていると感じる時、嶽本野ばらのエッセイが無性に読みたくなります。

アラジンと魔法のお買物 (ダ・ヴィンチブックス)

アラジンと魔法のお買物 (ダ・ヴィンチブックス)

 

 本書は著者の購入した、または購入しようと思ったアイテムについてのエッセイなのですが、野ばらちゃんそんなものまで家にあるんですかという内容です。「携帯電話」「時計」「ピアス」なんかはアイテムだけ見れば普通のお買い物です。でも「鞭」「剥製」「天蓋付ベッド」と、果たして普通に販売されてて普通に買えるのだろうかという、浮世離れしたアイテムも数多く載っています。私のお気に入りは「入浴剤」と「額」。

目次のアイテムだけを見ると、ずいぶん豪奢な暮らしぶりや道楽じみた印象を抱いてしまいます。ですが外伝と称された描き下ろしには、学生時代の風呂なしトイレ共同の四畳半アパートから野ばら城が出来上がっていくまでの、結構壮絶な著者の引っ越し歴が述べられています。

嶽本野ばらの著作には、己を貫く信念と、執念ともいえるこだわりが常に内包されています。流麗な文章の奥底に潜んでいるのは、生活の泥臭さや世界と折り合えないもどかしさです。自分の欲しいものやいらないもの、手に入れたからにはどのように扱いたいかという願望を貫き通す意思を持ち続けること。欲しいものが見つかるまで妥協せずに探し続けること。

絶対にこうでなくては嫌だという条件をぴったり満たすものとの出会いを求めて、納得いくまで探し続けるのは素敵なことです。お金で解決できるならそれに越したことはない場合もありますが、高ければ良いだろうとステータスを満たすために物を買うより、たとえ小さな買い物でも己のためにじっくりと時間をかける方が贅沢といえるのではないでしょうか。

そう書きつつ、ニュートラルなデザインで履き心地もそこそこだけどそこまで好きなわけじゃない靴を購入してしまった私です。普段履きの靴に穴が開いたまま出かけるという大失態を犯したので、慌てて新しい靴を購入した結果がこれです……。そもそも甲が厚く幅が広い私の足に最近のおしゃれな靴はなかなか入るものではなく、子供の頃から靴選びは苦行です。

野ばらちゃんのロッキンホースのように、これじゃなきゃダメだという憧れのオーダーメイド靴をきっと作ろう。自分の身の回りくらいはもっと思い通りにしてあげようと、嶽本野ばらの本を読むたびに勇気をもらいます。