短編小説の集い 第16回感想

参加させていただきました、短編小説の集い第16回、拝見した作品の感想です。拙作の反省も書こうと思います。 

novelcluster.hatenablog.jp

masarin-m.hatenablog.com

年末の慌ただしさと恒例行事への手慣れた感じが同居していて、日本の一般家庭の師走らしさを感じました。

いつの間にか家族のように接してくれる家人の存在や、掃除や餅つきの気兼ねなさから、自宅でも学校でもない第三の居場所に対するシンイチの安心感が伝わってきました。特別な台詞ではなく日常の動作や何気ない会話で表現されていて、登場人物が実在するかのようなリアリティを感じます。 

第11回に投稿なさっていた「九月一日」の続編として読むとオレ(シンイチ)と先生(ケンジ)、シホねえ(シホ)、コウスケの関係がわかるのですが、最初に本作を読んだ時点では人物同士のつながりをイメージするのが難しかったです。

シンイチが「先生」との関わりによって新しい居場所を得る物語と思っていたのですが、「シンイチがケンジの元に通うようになった経緯」が前面に出ていると感じたので「シンイチの意識を変えたケンジとの交流」をもっと読みたいと思いました。

 

diary.sweetberry.jp

寒い時期に恋しくなるおでんが実は……という闇鍋のような話だと思いました。

クトゥルフ神話に関する知識がないので、初読の際は見知らぬ諸外国の料理を見せられた気がして困惑してしまいました。かなりエグいものを食していたようですね。 

会話と地の分が改行なしで続いているのは鬼塚の語りの冗長さの表れのようです。奇妙なものを食べている状況と疑いも持たずのんびりしている姿の落差を執拗に書くことで、不安感をあおっていると感じました。

この前あったことを長々と話す、のんびりした鬼塚の人柄を体現したような展開だと思いましたが「鬼塚が奇妙なおでん屋へ行った後、その店に葉加瀬を誘ってみて、真実を知らされる」と時系列順にしたほうが流れはスムーズなように思います。

 

nogreenplace.hateblo.jp

クリスマス=幸せという図式に寄る辺なさを感じさせる話だと思いました。 

恋人や家族がいれば孤独ではないというわけではなくて、駅前で交錯しても関わりあうことのない人々の寂しさを感じます。特別な日だからうまれる楽しみもありますが、お仕着せの幸せの演出はつらいと常々思っております。

あたたかいラストながら、どんなに幸せでも寂しさはついてまわるものだと感じました。

 

karasawa-a.hatenablog.com

今回意識したことは以下の点です。

  • 時系列順のストーリーにせず、構成にひねりを入れる
  • 4000文字以上のボリュームにする
  • 男性をメインに書く

反省点は以下の通りです。

  • 「年末調整課」の業務内容の説明がわかりづらい
  • 文章のアラや癖が目立ち、推敲が不足している
  • ヒトシ目線を一人称で書けば、心理描写と状況説明を分けやすかったのではないか
  • 展開がご都合主義になっていると思う

第15回のとりまとめで主催者様より構成についての指摘があったので、今回はかなり意識して書いたつもりです。時系列をばらしたふたつの視点を組み合わせることで全体の流れがわかる物語にしたいと思ったのですが、タイトルどおり年末調査官のふたりに主眼を置くのかヒトシの心理描写を見せたいのか、はっきりしない話になってしまった気がします。

非現実的な設定を加えてしまうと設定に引きずられて思いつきで書いたような話になりがちだと感じているので、今度は特殊設定なしの現実に即したストーリーを書いてみようと思います。