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木曜日に買うものは4つまで

近所のスーパーでは日曜日に一定額以上商品を買うと、木曜日に使える値引きシールを配布しています。値引きといっても、税抜きで45円、30円、10円2枚の計4枚がセットなので、全部使っても総額から100円引きになる程度のものです。でも、日曜日に何度もレジに並んでいるのか、値引きシールを複数持っているお客が木曜日のスーパーには大勢います。

そんな中、10円のシールが余っているからあなた使いませんか、と声をかけてくれる方が時折現れます。45円や30円引きのシールをいくつも持っていて、10円のシールまで使い切るほど買うものがない、比較的年配の女性。木曜日は手持ちの値引きシール4枚分までしか商品を買うまいとする私は、おやつを買いだめする誘惑に抗いながら、親切な方の申し出を固辞するのであります。

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気ままなひとり暮らしを始めてから、財力が許す限りいかようにも果物やお菓子が手に入れられる贅沢を知ったのですが、最近はその匙加減が難しくなってきました。多めにストックしておいて計画的に消費するということができないのです。あればあるだけ食べてしまう怖ろしさを思うと、その時々で必要な分だけ手に入れたほうが心の平穏を保てます。

以前はそこそこ管理できていたことがうまくできなくなってきているのは、きっと他に気を回してあげないといけないことがあるからなのでしょう。あれこれとTODOリストを作ってはチェックを入れる作業に疲れてきているのかもしれません。

手持ちの値引きシールが貼れる分だけの食材を入れた買い物かごを下げてレジに並ぶと、前に並んでいるひとのかごの中にも値引きシールがいくつか見えます。ここぞとばかりに買い込んだ1.5Lペットボトルや、もともと安い豆腐や、ちょっといい卵や、寒いのになぜか出回っている苺なんかにぺたぺた貼られたシールは、レジ打ちのひとがひとつずつ機械にマイナスを打ち込んで役割を全うします。

ただ、そこでレジ作業の遅いひとに当たってしまうと、かごの中身の鮮度がどんどん落ちてゆく感覚に襲われます。商品を手に取る、バーコードを読み取る、値引き額を手打ちで入力する、商品を手に取る……流れるようなレジ作業とは程遠い動作です。レジ打ちは早くてなんぼでしょう、お金の計算を間違えないのも当たり前。繰り返しの作業をひとつひとつ確認し、丁寧にお金を数えるレジ打ちのひとを見て苛立ちを覚えてしまうのは、間違えずに素早くTODOリストを片付けていくことを良しとする、機械的な冷静さと傲慢さを抱えているからかもしれないとふと思いました。

他のレジに並んだお客が商品を詰め終わって次々に店から出ていくのを尻目に、レジ打ちのひとに合わせてゆっくりと会計を済ませた時、丁寧な「ありがとうございました」を聞いて、こちらも礼を返します。

ゆっくり確実に、大丈夫と思える慎重さを持って物事をすすめたい。自分で抱えきれる分だけをそっと見守っていきたい。もっとたくさん抱えられるしその程度のことで間違えない、とハードルを上げるほどに、己の傲慢さに疲弊してしまいます。

少しだけお得になる木曜日の買い物袋の中身は4つまで。でも、元から4割引きで値引きシールが使用対象外のアイスクリームは別に買ってしまうのでした。