隙間風に耐える

窓を閉め切ってぴったりとカーテンを合わせる。引きずるような長いカーテンは冷気の侵入を防いでくれる。敷布団の上に薄い毛布を敷いて、掛布団の上にも毛布を重ねた。布団のあいだには湯たんぽをしのばせる。やかんを火にかけながら、白菜のあいだに豚肉を挟んで鍋が壊れそうなくらい詰め込んだ。沸いた湯で保温ポットを満たす。詰め込んだ白菜が火の上で少しずつ縮んでいく。鍋と白菜のあいだにだし汁が溜まっている。

年末までの予定を書いていたらカレンダーはびっしり埋まっていた。大掃除をし、年賀状を書き、クリスマスの菓子を買い、おせちの準備をする。

寒さから身を守るために気が付いた隙間をどんどん埋めていっているのに、わたしの隙間はどうやって埋めればいいのか見当がつかない。言葉にできないままどこかへ行ってしまった思いや言われた言葉に返せなかった無力感は、もう長いこと細い隙間になって時々音を立てる。突き刺さった視線やすれ違った時の風が、人ごみを歩く苛立ちや焦りが、さらに隙間を広げていく。

隙間風はつめたくて耳にさわる。

くったりした白菜と豚肉を頬張りながら、ブランケットにくるまって読みかけの本のことを考える。本の行間には文字ではないものが詰まっている。それに比べてわたしはすかすかだ。何がどうすかすかなのか、説明することもできないほど何もない。脂が溶けただし汁をすするのに胸がすうすうしている。

隙間だらけのまま冬がやってくる。すうすうした細い冷気を感じるわびしさは、厳しい寒さに打ち震えるよりつらいのかもしれない。布団のあいだに、台所に、埋まったカレンダーに、何とか身を寄せながら隙間風を耐え忍ぶ。いつか本の行間のように、隙間は隙間のまま、目に見えないものが詰まっていくことを望んで。