短編小説の集い 第14回感想

初参加させていただきました、短編小説の集い第14回、誤解している部分もあるかもしれませんが、拝見した作品の感想です。 

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第14回短編小説の集い参加作品~惑星ラウレンティスの謎肉 - 小説をちゃんと書こう

不吉さをたたえたラストが印象的でした。
カエルの形状をした植物の肉という不思議な食べ物を想像するに、描写された美味しい肉はやはりまやかしに思います。
ダイレクトに本能を刺激する食に抗おうにも、理性はやすやすと越えられてしまう歯がゆさも感じました。

 

スイート・ベジタブル - なおなおのクトゥルフ神話TRPG

食を通じて自分を回復してゆき、食の場を与えてくれたひとによって失った職も取り戻せたという、二重の回復を想起しました。こんな上司、私もほしいです。
ひとつひとつのかぼちゃメニューが美味しそうだったので、読んだ後かぼちゃのポタージュ作りました。

 

第14回短編小説の集い「のべらっくす」に参加しました - ドーナツの穴

ブリア=サヴァランの「どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人間であるかを言いあててみせよう」という言葉を思い出しました。客があってこそ店は形成され、歴史を積み重ねていきますが、店もまた、食事を出すことで客を形づくるのだと思いました。

 

「第十四回 短編小説の集い」参加作品。「センチメンタル」 - 池波正太郎をめざして

仕事上の顧客や友人という関係ではなく、人柄にほれこんで関係を深めていくというのに憧れを感じます。
経済的には主従逆転していたとはいえ、小体な昔の洋風建築で食客へふるまわれる食事はきっと質素でも丁寧に作られたものだろうと思いました。
祖父と先生のエピソードがもっと読みたかったです。

 

柘榴 【第14回 短編小説の集い参加作品】 - 菅野樹のよもやま

水羊羹の甘苦さが、お嬢さんの想いを代弁しているようです。
遠くからきた柘榴と遠くへ行く先輩、押し黙る「私」と言いたいことははっきりというお嬢さんの対比が鮮やかでした。揺れる枝は登場人物たちの不安のようにも感じました。
自分とはかけ離れた先輩への遠慮や迷いをみると、「私」はまだ恋を知らないひとなのだろうかと想像が膨らみました。

 

『人生の半分』第14回短編小説の集い投稿作 - ときまき!

食事シーンのさりげない違和感をラストでさらりと説明されていて、いい意味で裏切られました。
家族や弟子との何気ないやりとりがあたたかく、食に関わってきた人物にとって非常に苦しいであろう状況が、重くなりすぎず伝わってきたと思います。
絶望を振り払う強さをもって、文雄には長生きしてほしいと思いました。

 

ビスケット ~短編小説の集い宣伝~ - 個人の個人による個人のための個人の日記

食の記憶は必ずしも食べ物自体だけではなく「誰と食べたか」「どこで食べたか」も一緒になって残っていく、複層的なものだと思いました。慣れぬものを食べるだけではなく、慣れぬ人と食べる緊張感や違和感は食べ物よりも状況を強く意識してしまうでしょう。うまく食べられなかった、何食べたのかよくわからなかったのは、きっと俺やせっちゃんだけではなかっただろうとも想像しました。

 

 

あまり自作の解説をしても小うるさいのではと思いますが、食欲と読書欲は反比例することよなあと思って参加作品を書きました。私は読みたい本がある時、食事をするのが億劫です……。