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秋の夜長に読みたい本5選

読書

寒さが苦手な私にとって、今頃は手足の冷たさに凍える季節の一歩手前の貴重な時期です。長い夜はできるだけ小さくなって暖かく過ごしたいのですが、そんな時お供にしたい5冊について書きたいと思います。

『カラマーゾフの兄弟』ドストエフスキー 

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

 

まずはどっしり重たい作品から。「父親殺し」から、カラマーゾフ家の兄弟たちの人生が大きく動いていく物語です。私は何度か読み返しては、三男アリョーシャが一番よくわからないと頭を抱えてしまいます。学生の頃、難しい話は分からないしロシアの歴史も政治も知らないと、手に取るのを躊躇していました。ですが焦らずゆっくりと読み進めていけば、自然と引き込んでくれる物語だと思います。

様々なテーマが盛り込まれすぎて目移りしますが、今の私にとっては「家族」についての物語です。あと、仲が悪かったりよかったりする三兄弟のやりとりからいろいろ想像してニヤニヤできる本でもあります。ひどい読み方ですね。

『とらんぷ譚』中井英夫 

中井英夫全集 (3) とらんぷ譚

中井英夫全集 (3) とらんぷ譚

 

 物語を54枚のトランプに見立てて組み込んだ連作短編集です。スペード、ダイヤ、クローバー、ハートの物語がそれぞれ12編で成り立っており、加えてジョーカーが2編収録されています。中井英夫といえば『虚無への供物』が日本三大奇書としても有名かなと思うのですが、秋の夜長にはトランプを1枚引くように『とらんぷ譚』からお気に入りの物語を探してみるのも楽しそうです。

個人的にはスペードの「幻想博物館」が好きですが、もう少し年をとって読んだ時、他の物語も自分に迫ってくる予感がします。今だけではなくて、将来の自分にとっても手放せない1冊になりそうです。 

新装版 とらんぷ譚 (1) 幻想博物館 (講談社文庫)

新装版 とらんぷ譚 (1) 幻想博物館 (講談社文庫)

 

『デカルコマニア』長野まゆみ

デカルコマニア

デカルコマニア

 

 ある一族の歴史が時空を超えて語られる物語。前述の2作がミステリだとすれば、本作はSFといっていいと思います。名を変え姿を変え、しかし同一人物だという予感を残しながら一族の前に現れる人物は、読み手もその世界に連れて行ってくれるようです。似たような人物が大勢出てくるので、相関図を描きながら読むのはなかなか骨が折れるかもしれません。

なめらかで風を切るような文章も心地よい物語だと思います。そして長野まゆみの書く食べ物は、あっさりした描写なのにものすごく美味しそうです。おなかがすいてるときは読まないほうがいいかもしれませんね。

『銅版画家長谷川潔 作品のひみつ』横浜美術館

銅版画家長谷川潔 作品のひみつ

銅版画家長谷川潔 作品のひみつ

 

銅版画家・長谷川潔の画集ですが、夜にひとり静かに見つめたい本です。マニエール・ノワールという版画技法で独特の美しい絵を遺しています。村上春樹の『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』の表紙も長谷川潔の作品です。

さびしいけれどあたたかい黒色は、いつまでも見つめていたくなります。 

ポプラ社「百年文庫」シリーズ

(001)憧 (百年文庫)

(001)憧 (百年文庫)

 

こちらは漢字一文字をテーマに編まれた短編集。全100巻で、1冊ごとにテーマの漢字は異なり国内外を問わず3編の物語が収録されています。「この漢字をテーマにこの作品を持ってきたか」という面白さもあれば、全く知らない物語ばかりで新たな作家やジャンルへの入り口にもなってくれる間口の広さもあるシリーズです。

たぶん半分も読めていないので、1巻から順番に読み進めていきたいと思っています。いままで読んだ中では、31巻「灯」がとても好きでした。夏目漱石の『琴のそら音』が収録されていて、読んでいた当時優しい気持ちになれたことを覚えています。

 

ずいぶん偏った選書にも思えますが、この本を読みながら冬眠の支度を始めようかなあという感じです。