読書

エストラゴン・オウ・ヴィネーグルを食べる/中井英夫「美味追真」

エストラゴン・オウ・ヴィネーグル。 中井英夫『とらんぷ譚』のハートに当たる章、『人外境通信』の「美味追真」に書かれるそれは、新宿の高野の地下食品売場という九州島民にはまるで縁のない東京の風景であり、想像するほかない戦中・戦後を生きた人々の姿…

どうしてだかさびしい。さびしいのだ。

ここ2週間ほど、さびしくてたまらない。自分でも不思議なのだが「さびしい、さびしい」と腹の中から急に何ものかが湧きあがってきて敵わないのだ。ひとりで家にいる時などぬおおと口から洩れることがある。「ぎゃふんと言わせてやる」といいながら実際ぎゃふ…

慣れたからといって、平気なわけじゃない/ディック・ブルーナ『うさこちゃんとたれみみくん』

寒さと仕事にやられて、倒れては跳ね起き奮闘する2月でした。 体を休める時間は確保できても、目に見えない傷が心を縮こまらせている感覚は抜けません。原因は大体似たりよったりで、そんなストレスにはもう慣れっこになったと思っていたのに新しい傷はどん…

ただの日記/2月20日

朝から1日中雨だった。病院に行き足の筋力低下を指摘されてかなりショックを受ける。寝込んでいたり運動ができない時期があったせいもあるかもしれないが、たるんだ足がみっともない。もっと歩かなくてはいけない。 通勤中に読み進めていた『12人の蒐集家/テ…

ただの日記/2月7日

減っていた薬がまた増えて眠気がひどい。眠れないよりはましだと思うことにする。先週あたりから治まらない頭痛がストレスによる緊張性頭痛と言われたので、PCに向かう時間も短めにしないといけない。健康を損なうと、楽しみも減っていくものだ。はやく健康…

ひとりバレンタインの準備をしたい

記事を書く画面の左上に(お題)バレンタインデーと出ているのを見て、今年は人様に何か用意する必要は全くないことに気づきました。昨年までは職場のひとや恋人に何かしらお菓子を準備していましたが、今年のバレンタインデーは会社は休みだし独り身だし休…

1月の読書記録2

この記事以降に読んだ本です。 karasawa-a.hatenablog.com 本は通勤電車の中で読むことが多いです。最寄りの路線で首都圏のようなすし詰め状態になることはまずありませんが、さすがに雪が積もった日は読書どころではない混み具合でした。 屍者の帝国 (河出…

1月の読書記録

思うように本が読み進められない日が続いています。1月に読んでまだ感想が書けていない3作品です。感想を書くために読んでるわけではないけれど、書かないと忘れてしまうので今年は昨年より読書記録をきちんとつけたいと思っています。 ねじまき男と機械の心…

仕事とわたしの距離感/津村記久子『この世にたやすい仕事はない』

できることなら、私は働きたくありません。でも、宝くじに当選して億万長者になったとしても一切働かないという選択はしない気がします。 仕事はただ賃金を得るためだけにしていることではなくて、私にとっては誰かと関わったり自分にできることを増やしたり…

ただの日記/1月8日

雪が降ると言いながらなかなか降らない。冷たい風雨にさらされながらも、温暖化の影響か、この冬一度も雪を見ていない。それでも寒くて手先がこわばってペンが持ちにくい。 書きたいことがいろいろ浮かんでくるが、PCの前に来るより先に消えてしまう。瑣末な…

小川洋子『琥珀のまたたき』読みました

静謐で、あたたかいのにもの悲しく残酷な物語でした。 感想を書きたいのですが、この世界を言い表す言葉が見つかりません。登場人物に寄り添いながら物語の世界に入り込んでいたはずなのに、彼らはつめたい石の中にいてこちらから触れることはできないのだと…

大人は楽しい。だが大人とは何ぞや

毎年、年始は伯母に着物を着させてもらっています。特に着物で外出するわけでもなく、着るだけ着て満足しているのですが、そろそろ振袖を着られる年齢でもなくなってきました。 いくら未婚でも、いつまでも振袖を着ていられるのはテレビ番組に出演するような…

本に負ける

最近本を読んでいても、目が滑ってうまく内容が理解できないことがままあります。 通勤中は百年文庫を読んでいることが多いのですが、6巻あたりから物語に重苦しさを感じ、9巻まで来たところで、もう読んでいるポーズをするのが精一杯です。本当に重苦しい話…

年末年始に読む予定の本

今日は最寄りの図書館の年内最終開館日だったので、年末年始に読みたい本を借りてきました。仕事納めは28日なので、休みの間に全て読み切れるかは怪しいです……。 ねじまき男と機械の心〈上〉 (大英帝国蒸気奇譚2) (創元海外SF叢書) 作者: マーク・ホダー,…

どうするかは、自分で生み出さなければならない

あまり読書が進まない日が続いています。 小説にうまく入り込めなくて、通勤電車で少しずつ読んでいた対談に以下のくだりがありました。 どうぞ覚えておいてください。今、年長者に「こんな世の中に誰がした?」と詰め寄ることのできる世代のあなたがたも、…

探り当てられない出どころ/百年文庫『闇』

百年文庫第7巻、『闇』の感想です。 (007)闇 (百年文庫) 作者: コンラッド:大岡昇平,フロベール 出版社/メーカー: ポプラ社 発売日: 2010/10/13 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (1件) を見る 収録作品 コンラッド「進歩の前哨…

<その人々>になる

空の写真をブログに投稿する。 カフェで昼飯を撮る。SNSにアップする。 人身事故で電車が止まる。いらだちをツイート。 上司がゲイバーから出てくるのを目撃する。社内グループメンバーに一斉送信。 海辺で居合わせたライフセイバーの救出劇にカメラボタンを…

叫びたくても叫べないんだ/百年文庫『心』

百年文庫第6巻、『心』の感想です。 (006)心 (百年文庫) 作者: ドストエフスキー,芥川龍之介,プレヴォー 出版社/メーカー: ポプラ社 発売日: 2010/10/13 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (1件) を見る 収録作品 ドストエフスキ…

今聞いている音を、いつまで覚えているだろう/百年文庫『音』

百年文庫第5巻、『音』の感想です。 (005)音 (百年文庫) 作者: 幸田文,川口松太郎,高浜虚子 出版社/メーカー: ポプラ社 発売日: 2010/10/13 メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 6回 この商品を含むブログ (5件) を見る 収録作品 幸田文「台所…

軽やかに駆け抜ける/伊坂幸太郎『陽気なギャングは三つ数えろ』

無駄に小難しいことを考えて、書くにも読むにも立ち止まってしまうことがあります。いろいろ放り出して気楽に本を読みたい、そんな時には陽気なギャングの出番です。 陽気なギャングは三つ数えろ (NON NOVEL) 作者: 伊坂幸太郎 出版社/メーカー: 祥伝社 発売…

別れの季節/百年文庫 『秋』

百年文庫第4巻、『秋』の感想です。 (004)秋 (百年文庫) 作者: 志賀直哉,正岡容,里見弴 出版社/メーカー: ポプラ社 発売日: 2010/10/13 メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 4回 この商品を含むブログ (7件) を見る 収録作品 志賀直哉「流行感…

いい加減さと丁寧さをイギリスに学びたい

英語なんて全くしゃべれないのですが、イギリスへ行ってみたいのです。 Googleで「イギリス」と打ち込むと「イギリス料理」と検索候補に即出てくるくらい、食事に関する評判が尽きぬ国ですが、アフタヌーンティーはイギリスの右に出るものはないのではと思っ…

泥臭くて、忘れられなくて/百年文庫『畳』

百年文庫第3巻、『畳』の感想です。 (003)畳 (百年文庫) 作者: 林芙美子,獅子文六,山川方夫 出版社/メーカー: ポプラ社 発売日: 2010/10/13 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (2件) を見る 収録作品 林芙美子「馬乃文章」 獅子文…

誰かが読んだ本を私は読んでいて、私が読んだ本を誰かが読んでいる

図書館で本を借りると、ときどき誰かの貸出期限票が挟まったままになっています。栞代わりに使っていてそのままにしていたのか、存在自体を忘れて放置していたのか、本来であれば借りた当人が持っておくなり捨てるなりするものが突然目に入るのは不意打ちを…

苦しい時図書館で手に取った3冊

苦しい時、図書館で目に留まった本を読んで過ごします。先行きが無性に不安になってしまって、手に取った3冊です。 できるだけいい選択ができるように。 女という生きもの 作者: 益田ミリ 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2014/07/10 メディア: 単行本 この…

目に見えない強さ/百年文庫『絆』

百年文庫第2巻、『絆』の感想です。 (002)絆 (百年文庫) 作者: 海音寺潮五郎,コナン・ドイル,山本周五郎 出版社/メーカー: ポプラ社 発売日: 2010/10/13 メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 3回 この商品を含むブログ (8件) を見る 収録作品 …

心に秘めておくもの/百年文庫『憧』

以前から気になっていた「百年文庫」シリーズ(ポプラ社)を1巻から順番に読んでみようと思います。まずは第1巻、『憧』。 (001)憧 (百年文庫) 作者: 太宰治,ラディゲ,久坂葉子 出版社/メーカー: ポプラ社 発売日: 2010/10/13 メディア: 単行本(ソフト…

やりたいことはたくさんある/星野源『働く男』

『働く男』(星野源/文藝春秋)を読みました。雑誌連載していた映画エッセイや自作曲解説、又吉直樹氏との対談など、星野源の仕事が集められた一冊です。 働く男 (文春文庫) 作者: 星野源 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2015/09/02 メディア: 文庫 この…

オブラートに包んで貧困を語りたくはない/大西連『すぐそばにある「貧困」』

うまく言葉にできませんが、明日は我が身、と思った本です。 認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長を務める著者が、生活困窮者支援を通してみた貧困について綴った『すぐそばにある「貧困」』(大西連/ポプラ社)。 すぐそばにある「貧困」 作…

文楽に行ってみませんか? 個人的お気に入り演目3選

2004年に発行された『あらすじで読む名作文楽50選』が新版で出ていたので、その中でも特に好きな演目についてのエントリです。 文楽の演目は歌舞伎でも上演されることが多いので、実際に文楽や歌舞伎の舞台で観たことのある面白かった3作品と、個人的おすす…